APPLE VINEGAR - Music Award - 2021

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大賞選出

白熱した自由な議論の後、しばしのクールダウン休憩。そして、昨年同様に今回も、審査員それぞれがまず3作品を選び投票することになりました。「難しいなあ、今年!(後藤)」、「4枚選んじゃだめスか?(ヒダカ)」などの声も聞かれたほど、審査員全員が悩みに悩んで選んだ3枚は…。

後藤「僕はまず、ラブリーサマーちゃんには一票入れたいですね。ここからが非常に難しくて…角銅さんと、あと1枚はMoment Joon。いやー、難しい」

三原「私、いいですか? BIM、田中ヤコブ、ラブリーサマーちゃんでお願いします」

Licaxxx 「はい! 私、結構がっつり決まってる。賞の意味的には、BIMがいいなと。で、あと2枚選ぶならラブサマちゃんと、田中ヤコブ。田中ヤコブさんには、何が提供されたいですかって聞きたい(笑)。今一番入りたいのはここのスタジオですとか、誰かにミックスして欲しい、とかかもしれないし」

福岡「私はBIMさんと、LEXさんと、Moment Joonです」

ヒダカ「ヒップホップで攻めたね」

後藤「全員ラッパーだ」

福岡「そうですね、自分でもすごく意外でした。やー、、、かっこいいですねヒップホップ」

ヒダカ「次は俺か。確かに今年はすごく迷いますが…角銅さん、ASOBOiSMさん、ラブリーサマーちゃんですね。この3組が賞金を手にした時に、どう使うのか見たい、聴きたい感じです」

投票の結果は、ラブリーサマーちゃん4票、BIM3票。2票が角堂真美、Moment Joon、田中ヤコブに。

後藤「ラブサマちゃんとBIMのどちらかを大賞に選んで、準大賞にも少し賞金を贈りつつ、2票の3名の誰かに特別賞を送るのがいいような気がします。Moment Joonとはコラボレーションをする機会があって、今後発表される予定があるので、そのときに個人的に手伝えることがあるかなと。角銅さんは世界に出ていくような未来がこの先にあるように想像します。そう考えると、田中ヤコブくんに特別賞を送るのがいいかなと僕は思います」

福岡「おおーっ」

Licaxxx 「確かに」

後藤「ただ、うーん、ラブサマちゃんとBIMの2作のどちらか一つを選べないですよね。甲乙つけられない」

ヒダカ「今年はダブル受賞の方がいいんじゃないですか」

福岡「確かに、この2つが対比して聴かれた方が、面白い気がする」

三原「うん、比べようがないですもんね」

後藤「ラップ・ミュージックとギター・ロックが並ぶのが、最近の流れを表してますしね。この2作が大賞を取るのはいいかも」

ヒダカ「今を象徴している気がしますね」

Licaxxx 「音楽歴も多分同じくらいでしょうしね、この2人」

後藤「2人がこれまで煮詰めてきた時間を思うと、やっぱり両方に大賞を贈りたいですよね。2人で賞金を折半しつつ、特別賞の田中ヤコブくんはどうしましょう? ヤコブくんにもいくらか賞金を送って、あと、インタビュー記事を作るのがいいかもしれませんね」

Licaxxx 「それいい!」

三原「いいですね。本来は、インタビューは大賞だけだったんですよね」

後藤「そう。ヤコブくん、どんな人かもっと知りたいですよね」

三原「確かに。曲作りも謎が多いし」

後藤「田中ヤコブ x Licaxxx対談とかいいんじゃない? 企画しましょうよ」

福岡「おお! 見たい!」

Licaxxx 「(笑)ぜひぜひ。ヤコブさんが『お前が出てきたのかよ』って思わないでくれればいいけど」

一同「(笑)」

今年は賞金130万円が集まりましたので、大賞の2作品に60万円ずつ、特別賞に10万円を渡すこととなりました。

大賞

BIM
“Boston Bag”

ラブリーサマーちゃん
“THE THIRD SUMMER OF LOVE”

特別賞

田中ヤコブ
“おさきにどうぞ”

総評

福岡「選考会は、楽しみでありつつ、緊張もする日なんです。今年は特にドキドキしました。お金を払う方に回りたい、ってまじで思っちゃいました(笑)。今、バンドが少なくなっていると感じています。コロナに関わらずその流れは来ていたんですけど、正直そこに寂しさはありましたね。一方で、宅録が優位にある現状の中で、どのジャンルもどんどん進化している。急激なスピードで変化して、カテゴライズも、垣根もどんどん無くなってきていて。自分も聴く側として、常にアップデートしないといけないと実感しました。今日ここに来るまでは緊張していたけど、やっぱりみんなと音楽の話をするのは純粋に楽しかった。だから、そういう場所がリスナーの皆さんの間にも増えるといいなと思います。ひとりで音楽を聴くのも大事だけど、誰かと音楽を感じる場所があるのはやっぱり最高だなって」

三原「今年も参加させていただいて本当に光栄です。私は皆さんと違っていちリスナーとしての意見になってしまうんですが。去年出たものは、コロナ禍で生まれたものもあれば、そうじゃないものもあったと思いますが、個人的にはいつも以上に、音楽に癒しとダンス、心の拠り所を求めた一年でした。こうやってアルバム単位でその世界に浸って、様々な部分に神経を凝らしてじっくり聴くのは、本当に面白く豊かな時間で、音楽の楽しさを改めて感じましたね。シチュエーションや自分のテンションでも響き方が変わってくるので、どの作品も何度もいろんな環境で聴きました。どれも全く個性的なので選考会は難しいけど、好きなものについて語り合えば語り合うほどさらに好きになるなと、改めて思いました。ネットに勝手に好みを分析されてオススメされてしまう今の時代こそ、こういう賞とかで、多様ないいものが多くの人に届いたらいいなと思います。ありがとうございました」

Licaxxx 「去年から今年にかけて、コロナが拍車をかけたことで流行りとかもなくなり、それぞれ聴きたい音楽を突き詰めている人が増えたと思います。私としてはそれはすごくいい流れで、音楽がさらに面白くなるので、だからこそ、今までの型にはまっていない賞は重要性が増してくると思いました。今回も、純粋にいいものと、それをノミネートする意味をすごく考えました。こういう機会をいただけて、自分でもそういう風に考えたので、すごく楽しい時間だった。来年も、もっと音楽が楽しくなるんだろうなという感じがしてますね。もっとみんなでいろんな聴き方をして、それぞれ個人主義が深まっていけばいいなと。きっと楽しいと思います」

ヒダカ「パンデミックの影響があったので、今回はもう少し内省的なサウンドが多くなるかなと思ってたんです。でもゴッチのセレクトがそっちを選ばず、アッパーなものも満遍なく選ばれていたので、それに個人的にはちょっと救われたといいますか。自分もふと気づくと、弱気なので癒しみたいな静かなサウンドを求めちゃって、慌ててちょっとアッパーなものに切り替えたりするシーンが昨年は何回かあったから…もちろん、静かな音楽にもいいものがたくさんあるので、それがダメと言う意味ではないんですけどね。あと個人的に、ライヴを解禁して無観客でやった時に、自分はこんなに音楽を聴きながら体を動かしたかったのかと実感したんです。だから、自分でも今年から来年にかけてグルーヴ解禁みたいなことをやっていきたいですし、そういう音をもっと聴きたいなと。サウンドのタイプとか、アーティストの形式にとらわれず、それこそ音楽じゃなくてもいいかもしれない。ただ、体や心が動きたくなる、動かしたくなるような音楽を自分も探したいですし、来年のノミニーにそういうユニークなものが出てくることも期待します。2021年、人ごとではないので、自分も含めみんなでコツコツとやっていければなと思っています。ありがとうございました」

後藤「みなさん、審査に参加してくださってありがとうございます。本当に感謝しています。作品を語る時にどんな言葉を自分が持っているか、自分を省みないといけないし、それは社会のあり方も関わっていると思うんですよね。今だったら、ジェンダーや差別の問題などが目の前にある。どうやって平等にしていくかは、すべての人に関わりのあること。作品を語る時に、どう言う言葉遣いが相応しいのかということも勉強なんだと思って、今年は参加しました。
あと、この賞にノミネートされなかった人たちに『気にしないで欲しい』と伝えたい。僕のアンテナにも限りがあるから、ただ見つけていないだけの可能性がある。申し訳ない。“賞=アワード”というものの罪深さは拭いきれないですし。選ばれた作品についても、最後に票が入らなかったからといって作品が良くない訳ではないですから。というか、もう、どの作品も素晴らしい。個人的には最後にMoment Joonを挙げたけど、ほかの作品も選びたかったなみたいな後悔もあります。すべての人に、胸を張って今後も面白い作品を作って欲しいです。
全作品を、自分のスタジオの、いつも自分がガチンコでミックスする環境で聴きました。どの作品もいろんなポイントで、『おーっ』とうなったり、『マジか、よくこんな事思いつくな、よくこんな曲できるな』みたいな感動があって。そういう素晴らしい10作品に巡り合えてよかった。また来年も、現在進行形で作られている作品に出会うのがとても楽しみです。そして、とにかく、音楽を楽しんで聴く人が増えて欲しいということを願ってやみません。そしてリスナーもミュージシャンも、もっともっと環境が良くなっていくと、豊さがドライブしていく。受けて渡して、を繰り返すうちに増幅していくと、聴き手も演奏する人も…演奏する人も聴き手ですから、そういう意味では、リスナーにとって幸せな時代がどんどん近づいてくる。この賞は、その一つの力になりたい。そう言う気持ちで、今年もやらせていただきました!」