今回は、それぞれが3アーティストを選んで投票する、ということになりました。選者の皆さん、しばらく熟考に熟考を重ねて…。
文:妹沢奈美 撮影:山川哲矢
三原「めっちゃ難しいー」
後藤「僕は…AAAMYYYの『BODY』、そしてROTH BART BARONの『けものたちの名前』、そしてなみちえの『毎日来日』がいいかな、と」
日高「俺は、長谷川白紙くんと、NOT WONKと、なみちえさんかな…。うーん、Daichi Yamamotoくんもいいから、彼は次点で。 Daichiくんは無い物ねだりですね、俺にはできないことだから」
Licaxxx「はい! 私はBlack Boboiと、Dos Monosと、東郷清丸」
三原「私は、Daichi Yamamotoと、東郷清丸と…。うーん、すごいっていう意味では長谷川白紙なんですけど、うーん…ROTH BART BARONで」
福岡「私はDaichi YamamotoさんとSweet Williamと、ROTH BART BARONです」
投票で、ROTH BART BARONに3票、
次いで2票が東郷清丸、Daichi Yamamoto、なみちえという結果に!
後藤「2票の人にも何かしら送りましょうか」
日高「そうですね」
三原「選ぶの、めっちゃ難しいですね」
後藤「これね、毎回難しいんです。責任も重いから」
Licaxxx「確かに」
後藤「ただ3票入ったROTH BART BARONは、これまでになかったと思いますね、バンドで、こういう音楽で、このサウンドで、このクオリティというのは」
日高「そうだね。外国に出て欲しいね」
福岡「すごいクオリティ高いと思うし、前作よりだいぶ進化してる感じもありますよね」
後藤「でも悩ましいですよね。今回のラインナップも、全部いいですから。どれも最高なので」
福岡「うんうん。次点を言っていいなら、本当いろいろありますからね(笑)」
三原「私は、東郷さんに2票入れたいくらいです。演奏がすごく良かった。でも、ただ好きなだけかも(笑)」
日高「いや、いいんです、その個人的な “好き” も大事ですよ」
後藤「それでは、ROTH BART BARONが大賞。僅差ですから、Daichi Yamamoto、東郷清丸、なみちえにも特別賞を贈るというのがいいんじゃないでしょうか。最終的に集まった賞金の半分をROTHに差し上げて、残りの半分を3組でキリのいいところで分けて。端数に関してはROTH BART BARONにお渡しすると」
大賞
ROTH BART BARON “けものたちの名前”
特別賞
東郷清丸
“Q曲”
Daichi Yamamoto
“Andless”
なみちえ
“毎日来日”
総評
Licaxxx「まとめてこんなたくさんの作品について話すこと、しかもいろんな方とみっちり話すことはないので、レアな経験でした。それぞれの聴き方とか、聴く環境でもかなり変わってくると思うので、もっといろんな人と話すとまた変わってくるのかなあ、とも思います。あと、賞自体に…こういう、アーティストに陽の目が当たる賞があるというのは、作ってる側、やる側にはとても重要なことだと思います。だから、今回お力添えできてすごく嬉しく思います」
三原「もともと、ゴッチさんが始めたこのAPPLE VINEGAR -Music Award-は素晴らしい取り組みだと思っていたので、今回参加させていただけてとても光栄です。ただ、私は音楽家じゃないので、私でいいのかという思いはありつつも、いちリスナーとして選ばせていただきました。全部の作品が素晴らしくて、こうやっていろんな場所で繰り返し聴いたり、ライナーノーツやインタビューを読んだりして改めて聴き込むと、全部もっと好きになりました。それを言葉にするのは難しかったですけど、これを機に、この作品たちをもっと多くの人に聴いて欲しいなという想いが、一番大きいですね。そしてみなさんに、このまま自由に音楽を続けて欲しいなと。ありがとうございました」
福岡「途中でも言ったんですけど、私が選考していいのかという思いが毎年強くなって、今年はいよいよ本当に、私でいいのか?っていうくらい自分の経験や想像を超えた作品がいっぱい出てるなと思いました。Licaxxxさんが言ったように、聴いている人とか環境とか選んでいる人が変わったら、受賞される方も変わったと思います。それくらい全部素晴らしくて。最終的には多分、それぞれの好みもあってこうなったと思うんです。だから、この記事を読んでくださっている方にはノミネート作品全部聴いて欲しい。どれも本当に素晴らしかったと声を大にして言いたいです。で、ROTH BART BARONは3票入ったということもあって、クオリティも高いし、単純に私はすごく好きなアルバムでした。なので、受賞されて嬉しいです」
日高「例年、年を追うごとにノミネーションにバンドものが少なくなるんで、これも時代だなと思いつつ、逆にバンド側はチャンスだと感じましたね。DTM関連はこのあたりで少し落ち着くと思うので...TuneCoreをはじめアグリゲーターとかサブスクによる大インディーズ時代に突入し、昔で言ったらパンク・ロッカーたちがDIYでレーベルを始める、みたいなことが今はデジタルで、一人ででもできちゃう。だから多分、今これを読んでいる人にも等しくチャンスがあると思います。来年のノミネーションの中には、これを読んで聴いてましたっていう人がいてもおかしくないですよね。だからますます、バンドマンとしての俺はお役目御免だな、と思った一年でした(笑)」
後藤「や、本当に、自分で始めておいて、アッコちゃんが言ったように恐れ多い気持ちがあるというか、毎年選考のプレッシャーで胃が痛いです。自分だったら『なんで俺、選ばれなかったんだろう』って思うはずだから...。ただただ、フェアでありたいと思う。どうしてもアワードって権威性を持っちゃうから、そこに対する反省とか、後悔をいつも持ってやってます。
今回は、新しく参加してくださった二人の視点がありました。倒すべき業界の慣習としての日高さん(一同笑。日高:「オールドスクールの視点です(笑)」)の立場がありつつ、現場のDJの視点、それからラジオDJの視点、アッコちゃんのプロデュースの視点など、評価の角度が増えるとやっぱり面白い。もう少し増えて、審査員が8人くらいでもいいかなっていう気もします。トラックメイカーの話とか僕にはわからないところをLicaxxxさんが指摘してくれたり、僕らが普段読み込めていない作品の意図を三原さんが読んでいたりするから、すごく面白かった。審査員の皆さんには、懲りずにまた来年も参加してもらえると嬉しいです。基本的に、審査員なんてやりたい人がいないと思うから。
あと、今回はROTH BART BARONが大賞で、もちろん彼らの作品が素晴らしいから賞を獲ったんですけど、でも、どの作品もとても素晴らしいんだってことを伝えたい。ここにノミネートされていなくても、いいなって思う作品はたくさんあって。だから、多くの人が勝手に賞を作ったらいいんじゃないかな(笑)。そうやって、素敵な作品に拍手を贈る文化を共有できたらいいなと思います。若い人たちはそれが自然にできているから、そこかしこでコラボレーションがあって、面白いものがいっぱい出来ている。10回目まではアワードをちゃんとやり遂げたいと思っているので、メディアとしてどれだけ力があるかはわからないんですけど、なるべく外へ広めることにも力を入れたいですね。選考に対する一切は、僕が叱られるつもりでやってます。そういう責任は僕が取る。で、こういうアワードなんてなくてもいいくらい、音楽の環境が良くなるといいですよね。ROTH BART BARONが普通にホール・ツアーを回る場があったり、MステでDaichi Yamamotoやなみちえがラップしているような…そういう時代の到来を僕は望みます」